なかなかアポが取れず、苦戦していたある企業の経理部長がいました。その企業に何度も通ううち、あるきっかけから若い経理担当者の仕事を手伝うように。必死に手伝う私の姿が経理部長の目にとまったのか、出前を取ってくれ、経理部長から話しかけてくれるようになりました。

そして出前の親子丼を一緒に頬張りながら、ポツリポツリと「仕訳伝票が多すぎる」「部門別収益の計算が大変」「人手が足りない」と、経理部長自ら本音を語りだしてくれたのです。

「これだ！」と私は思いました。
「営業もホテルサービスも共通。どうしたらこの人が喜んでくれるのか、それを考え抜き行動すれば必ず道は開ける」と確信しました。
次のアポイントで、上司と公認会計士を連れて経理部長を訪問し、約2000万円のシステムを受注しました。入社2ヶ月目のことでした。

その後、外資系・大手企業などのクライアントを持ち、営業の面白さを味わいました。
そして多くのビジネスに接するうちに、「自分だったらこんなビジネスをやる」という事業アイデアが生まれ、何百種類もの事業プランを書いていました。しかし、試しに応募した社内の新規事業公募では見事に却下されました。

社会に「感動」と「衝撃」を与えるサービスを生み出せれば

「今が勝負に出る時かもしれない」。同僚と共に3人で100万円づつ出し合って会社を設立しました。26歳の春でした。

しかし、大変なことが分かってきました。当時の事業プランはよく検討してみると、成長性・収益性に乏しい事が明らかになってきたのです。しかも3人とも、結婚して子供もいました。

そうこうしているうちに、通帳の残高はどんどん減っていきます。せめて自分達の人件費を稼ぐため、受注に駆け回りました。当時の昼飯といえば「握り飯」。「この握り飯生活から早く脱出したい」と常に思っていましたね（笑）。

受注が次第に増えるうちに、成長市場で継続的に売り上げられるビジネスを常に意識するようになりました。その過程で、大手メーカーの携帯サイト開発を受注。それを皮切りに、モバイルコンテンツサービスを展開しはじめたのです。

現在は、日本最大級の規模を誇る当社提携ネットワーク群に、モバイル向けのP4P広告（コンテンツやキーワードに連動した広告）を配信するモバイル広告事業、モバイルコンテンツの企画、開発、運用、保守を一貫して提供する、モバイルコンテンツ事業、IT・インターネット業界に特化し、人材紹介や技術アウトソーシングサービスを提供する人材事業という３つの事業の柱を持っています。

モバイルで成長できた秘訣は？　とよく聞かれますが、大事なのは“センス”や“目利き”じゃないと私は思っています。利益が出るビジネスに育つまでには時間がかかります。それを持ちこたえるのに必要なキャッシュを、僕は走り続けながら、あらゆる方法で生み出した。ただし他人に頼んでお金を出してもらう事なく。これに尽きます。
……ある意味、ベタベタの錬金術ですかね（笑）。

創業以来6年で、立ち上げたビジネスは7つ。途中で止めた事業を含めると、それ以上。利益が出れば、それを使って独自の研究開発を進めていく。その中から、1つでも社会に「感動」と「衝撃」を与えるサービスを生み出せれば、十分だと考えていました。その結果、初年度3200万円、翌年以降2億、10億、18億、28億、35億と、毎年着実に売上を伸ばしていったのです。

次回は、私たちの夢、そして皆さんへのアドバイスをお伝えしたいと思います。

【第３話】何度でも、ウェブドゥジャパンは生まれ変わります。