アルバイトスタッフの企画が、サイバースターを救った。
28歳で携帯電話販売の会社を妻と二人で始めました。固定給を捨てて、やった分だけ稼ぐことができる環境なら、事業は飲食でもメーカーでも何でも構いませんでした。若さもあったのかもしれませんが「やってやる」「金持ちになってやる」という気持ちが強かったですね。ローリスクでハイリターン、そしてこれから何がくるのかと考えた時に、一番良いと思ったのが携帯電話販売だったのです。
携帯電話普及の勢いもあり、事業は安定。スタッフも10人ぐらいに増えました。しかし、一生この仕事をするのかと問われたら、それは疑問だと答えるしかありませんでした。やりたいことではなく、手段として選んだ事業でしたから。 6年間、携帯電話販売を行っていたのですが、そのうち「携帯電話利用者にもっと便利でより良い情報を提供できるコンテンツ開発を行いたい」と考えるようになりました。そして、社会と人に役立ち、中小企業を IT 化するような事業を立ち上げたい気持ちが、私の中で強くなりました。そんな理想の企業を創るために、新事業に向けた新たな挑戦がスタートしたのです。
有限会社サイバースターを設立。「ispot」に出会うまでの苦しい1年間。
2001年1月、有限会社サイバースターを、後輩と知り合いのシステムエンジニア3人で設立。携帯電話におけるコンテンツシステムの受託開発を主に事業を始めましたが、 8月には資本金の500万円も70万円に。9月からは給与が払えない状況になりました。
私の誕生日である 8月29日に社員やアルバイトのみんなが、カラオケBOXで誕生日を祝ってくれることになりました。初めにマイクを持った私は曲を入れる前に「明後日から来るな!」と解散宣言。それからはみんな、悲しい歌ばかり泣きながら歌っていましたね。
そんな給料が払えない状況下でも、「何か考えましょうよ!」と言って残ってくれた4名で、9月からは新しい企画を考える日々が続きました。今考えてもこのときが一番苦労した時ですね。「毎週1つ企画書を出す」と決めたものの、なかなか良い企画も生まれず、先が見えない毎日でした。そんな状況を一変させたのが、WEBデザイナーをしていたアルバイトスタッフの女性が考えた企画だったんです。
その企画が、美容・健康・癒しに特化した目利き紹介ポータルサイト「 ispot 」の前身の「癒し系スポット関西」でした。エステなど、女性にとって初めて行くお店には不安があるもの。そんな不安を解消するために信頼性の高い情報を提供。スタッフが店長にインタビューや体験取材を行います。また、施設を利用したユーザーからのクチコミ掲示板も設置し、事前に質問もできるようにしました。現在、当社事業の軸ともなっている企画がその時、生まれたのです。
掲載件数を増やせば当然利益は出ますが、「本当の情報をわかりやすくお伝えする」という基本理念とユーザー視点に立ったサイト作りを行うため、厳しい掲載基準を設けて、その基準をクリアした店舗のみを掲載するようにしています。このこだわりが F1層(20〜30代の女性)から高く支持されることになった要因とも言えますね。
2002年3月に開始した「癒し系すぽっと関西」の掲載店舗数は40件程度でした。検索件数としては物足りない状況でしたが、今までにないサービスであることと、当時の癒しブームもあり、 9月には東京に進出し「癒し系スポット関東版」のサービスを開始。 2003 年には株式会社に組織変更し、名古屋、福岡と次々とオフィスを開設。今ではWEBコンサルティング、ECサイト「癒し生活」、美容・健康・癒しに関わる求人情報を提供する「salon job」など幅広く事業展開しています。
給料が払えない状況でも会社に残って、必死で企画を考えてくれたメンバーがいたからこそ、今のサイバースターがあると思います。そんなメンバーを大切にし、これからの大きな目標に向かって共に頑張っていきたいと思っています。
次回では、サイバースターの今後の展望についてお話したいと思います。
株式会社サイバースター
代表取締役社長兼CEO 外囿吉喜(ほかぞの よしき)