カッコいいスーツを着て、カッコいいビルで働いていた自分

突然ですが、取り返しのつかないものについて、くよくよしても仕方ないと思います。
僕の場合は高卒で、今さら大学に行きたくてもそれはあまりに無謀だし、状況は変わらない訳です。ですから、ないものを探すよりも今あるものから先に進むことや、その術を考えることがとても重要です。

当時の上司に誘われトランスコスモスの新規事業立ち上げメンバーとして参加することになったのですが、その約15名の面子は豪勢な顔ぶれでした。僕を除いて全員大卒以上で、ＭＢＡホルダー、6大学出身者もしくは大学院、英語堪能、ビジネススクール通い、コンサル出身者など、なかなか揃えようと思ってもかなわない面々の中、僕だけがたったひとり高卒！後日談によると、実際の入社に際してかなりの賛否両論、難関だったそうです。

この時の採用の決め手になったものは「自分の言葉で話せるかどうか」だったようです。この「自分の言葉で話す」を簡単にお伝えすると、受け売りになっていないということです。「どこかで聞いたことある話だなー」と思うようなことってあると思いますが、それでは聞いているほうは退屈ですし、深い興味は持てません。経験の裏づけがあったり、何らかの考察に基づいた話のほうがユニークであり、オリジナリティ豊かなんです。就職活動をする皆さんはぜひこの点を深く考えてみてください。こうして、曲がりなりにも一部上場企業勤務。クライアントはそれこそ名の知れた会社ばかり。そして、あるとき気がつきます。

そう、22歳のアルバイト時代に思い描いた「カッコいいスーツを着て、カッコいいビルで働く」自分がそこに居たのです！今思えば小さな目標ですが、当時の僕からすれば夢物語。そんな小さくて大きな夢はひとまずここで達成されました。実際にはそのこと自体は「ただ単にスタート地点に立った」に過ぎないわけですが、これは僕の中のエピソードとして大事なものでした。

話を戻すと、トランスコスモスに転職した当時はネットバブルが弾けてその傷がまだ癒えぬ頃。クライアントの中では慎重論が多く、かつ新規事業で事例がないので、営業はなかなか困難を極めました。しかし結論を先にお伝えすると、そうそうたるメンバーの中で、通期を通して目標達成をしたのはたった一人、僕だけ。その達成要因には１、２社目の経験が大きく役立っていました。

シンプルで奥深い、ネットメディアの可能性に魅せられて

「工夫をする力」「知名度なしでの勝負」「考える力」「形にする」「自分を売り込む力」これらの力が過酷な状況で育まれており、知らずして大きな成果を上げられるような力を手にしていたのです。そしてその力を発揮するには、「ヒト」「モノ」「カネ」を持っている上場企業は最高の舞台でした。

また、この時に弊社の事業であるネットメディアの存在をビジネスとして知ることになります。メディアには「発信」「オリジナル」「仕組みで上げる収益」「コミュニケーション」が内包されており、知れば知るほど奥が深いけれどシンプルなモデル。僕にとってとても魅力的な商材でした。

すっかり魅了された僕は、社内でオリジナルメディアの立ち上げの企画を打ち出します。
ですが、これは不発に終わりました。会社側からは2期目で数十億円（具体的な数値は省きます）の営業目標を与えられており、その達成なくしては事業部の存続すら危うかったのです。そんな事業部の命運を分ける時期に、営業として結果が出ていた僕を外すことは会社としてあり得ないと、結局、却下となりました。

しかし、既にメディアの可能性に魅了されていた僕は日に日にその気持ちを大きくし、結局その期の達成を見届けて、起業家への道を歩むことになります。
振り返ってみると、トランスコスモスでの経験は僕の人生を大きく変えた場所でした。今まで触れたことのない大きな世界、ビジネスパートナー、ビジネス、仲間との出会い。
この場なくして僕の起業はなかったと思います。

そして、僕のサラリーマンとしての歩みはここで終わります。
次は、理想の環境と今後のベーシックについてお話ししたいと思います。

【第３話】場の提供と今後のベーシック