アルバイト先のWEB制作が、転機に。
カーディーラーを3年やって、少し疲れてもいたので、ゆっくり仕事を探すつもりでした。そんな時、折り込みチラシを見たら、羽田のパーキング会社でのアルバイト募集に目がいきました。以前のアルバイト先と同じような仕事だったので、体ならしにそこでアルバイトを開始することを決めました。働き始めてすぐに、「とにかく楽だな〜」と思いましたね。売上へのプレッシャーや時間的拘束が全く無くなったので、本当に心身が軽くなりました。でも、ここで私は転機を迎えたのです。
そんなある日、時代の流れからか、そのパーキング会社でも「ホームページを作りたい」という声が上がりました。独学ながらある程度のWEBサイトが作れるようになっていた私は「良かったら、作りましょうか?」と手を挙げました。パーキング会社の社長は「作ってくれるのなら、その分のお金を払うよ」と言ってくれました。でも私は「いいですよ。働かせてもらっていますし」と断ったのですが、社長も強く勧めてくれたので、駐車場の予約が入ったときに、紹介手数料を何%かマージンとしていただくことになりました。そのホームページが、予想外の反響を得たんです。
ホームページを見たお客様から、何と月間200台以上の予約がありました。すると、私も面白くなってきて、「じゃあ複数ドメインで使い分けたら検索結果が上がるのでは?」などといろいろ考えるようになり、様々な工夫を始めました。当時は“SEO対策”というのが一般的になる前だったので、頻繁に更新されることよりも、意図的に検索上位を狙っていける時代でした。そういう工夫を絶え間なく行った結果、アルバイト代よりも予約マージンのほうが金額的に上回るようになってきたのです。「これは商売として成り立つかも?」そんな予感を感じた出来事でした。
「当時、空港周辺の安い民間駐車場の存在はユーザーにあまり知られず、空港利用者は空港付属の高い駐車場を使う人がほとんど。安くて便利な民間パーキングが空港の間近にあるんだということを知ってもらえれば、ユーザーにも民間駐車場にとってもメリットが大きいのではないか」。
そうした想いがきっかけで、羽田と成田空港周辺の民間駐車場を紹介する独自のWEBサイトを作ることにしました。儲けるという観点は当時あまり無かったですね。それが今の当社の基幹サイト『旅駐』の原型となったのです。
結婚、第一子の誕生。広告代理店への就職
私は2度目のアルバイト時代に結婚をします。
ある夜、付き合っていた彼女から「子どもが出来た」と嬉しそうな電話が……。私も嬉しかったのですが、正直焦りもありました。結婚式はもとより、子どもが出来ればいろいろ物いりですし、私はまだアルバイト中。そして気分転換にたまたま行ったスノーボードで腕を複雑骨折してしまいました。そんな逆風の中でしたが、私は彼女と結婚し、やがて生まれてくる子どもを見守りつつ、一緒に暮らすようになりました。
経済面をとりあえず安定させるため、また社員として就職することを決意しました。就職活動後、とある広告代理店に就職しました。そこで働きつつも、趣味の一環として、民間駐車場を紹介するサイトの運営は続けていました。平日の夜や休日に、コツコツとWEBを作成・更新し続けていたのです。
そんな時、当時大ベストセラーだった『週末起業』(藤井孝一)という本と巡り会いました。ある本屋で山積みになっていたから、何となく手にとって見たんですね。読めば読むほど興味深く、週末起業を支援している週末起業フォーラムがあることも初めて知りました。そこではセミナーや会合なども行っていたので、「これは一回行ってみよう!」と勇気を出して参加しました。
すると、参加しているビジネスパーソンが男女問わず、一様にギラギラしているんです。「一時しのぎの副業」って感じではなくて、「こうしたビジネスがやりたい!」という強い想いを持った人が多かったですね。「ああ、こういう人はいっぱいいるんだなぁ」と感心しました。起業家というよりも起業家予備軍といった方々でしたが、そういう人たちは会社の愚痴とかを一切言わないんです。時間がもったいないから。また、彼らは会社の行う研修などは積極的に参加し、自らのスキルアップを貪欲に追究していましたね。
そうしたビジネスに対する姿勢や熱意には、大いに刺激を受けました。起業したいけど、具体的にどうすれば良いのか分からなかった私にとっては絶好の学びの場。私自身も色んな人に出会いながら、凄く社交的になりましたね。週末起業フォーラムで出会った友人たちと今でも交流はありますが、急成長というより、着実に安定成長している企業が多い印象です。
そこで多くのことを学ばせてもらって、私自身もリスクなく起業できました。その会合に参加した3カ月後、モチベーションが一気に上がった私は、有限会社エレメントを立ち上げたんです(笑)。会社運営を平日の夜や週末にする反面、平日は代理店で一生懸命働いていました。週末起業してからは一気に仕事が面白くなりましたね。時間はタイトでしたけど、とても充実していた日々だったと思います。
株式会社エレメント
代表取締役社長 近藤勉(こんどう つとむ) 1976年12月3日生まれ